『ゴミ屋敷』その傾向と対策①

今年もあと1か月あまりとなり、いわゆる『ゴミ屋敷清掃』の依頼もひと段落と言った感じでしょうか。『ゴミ屋敷清掃』の依頼は、5月頃から徐々に増え始め、長くても10月の中頃までにはほぼ終息します。湿気によるカビの発生や食材の腐敗が進みやすくなり、さらに熱さにより害虫の増殖と悪臭の発生し、問題として表面化するからです。冬になると『ゴミ屋敷清掃』依頼は極端に減りますが、ここ数年は別の傾向がみられるようになってきました。それは、独居高齢者からの『ゴミ屋敷清掃』の依頼の増加です。ヘルパーさんやケアマネージャーを通じての依頼が増えていることです。

そこで、『ゴミ屋敷』とは?、弊社の経験から『ゴミ屋敷』になってしまう人とは?『ゴミ屋敷』にならないためにはについて、30代~50代方と、60代以上の高齢者の場合とで分類して考察してみたいと思います。

⑴そもそも『ゴミ屋敷』とは

お客様から『「ゴミ屋敷の片付・清掃」をお願いします』と依頼を受け、見積もりに伺うとゴミ屋敷ではない場合が多々あります。
弊社では、要らないものが単に散らかっている状態では、『ゴミ屋敷』とはみなしていません。ゴミの種類で判断しています。

ゴミの種類としては、使わなくなった「不用品」でなく、あくまでも『ゴミ』です。例えば、飲み干したペットボトルコンビニ弁当の容器商品などの包装紙やビニール袋チラシや開封後の封筒等です。つまり、それ自体では使えない物がゴミです。また、洗ったり・修理すれば使えるものでも、その手間や修理代が高額で新たに同一のものを購入したほうが安価なものは、ゴミと言えるでしょう。例えば、修理代が高額な壊れた家電などが該当します(ただし、モニターが壊れただけのPCなら、そのメモリーやCPUは売却価格がありますのでゴミとしては扱いません)。

量としても、ただ「足の踏み場がない」程度では、『ゴミ屋敷」とは呼びません。モノを押しやれば、座ったり寝たりするスペースができるようなら「ゴミ屋敷」一歩手前と言えるでしょう。寝起きする居住空間が全く確保できないようなゴミの量の場合を私たちは『ゴミ屋敷』と呼んでいます。見積もり時に、玄関ドアを開けると腰までゴミが積みあがっており、中に入れずにベランダから中の様子を確認するしかできなかった現場もありました。

私たちは、その物だけでは経済価値・使用価値がなくモノ」が「居住空間が確保できないほどの量」が蓄積された住居を『ゴミ屋敷』として扱っています。

⑵『ゴミ屋敷』にみられる傾向(必ず大量にある物と無い物)

先ほど、『ゴミ屋敷」について述べましたが、お客様は、業者に依頼せざるを得なくなった羞恥心から『ゴミ屋敷』と自ら呼称しているのかもしれませんが、お客様を傷つけないためにも、よっぽどでない限り『ゴミ屋敷』という呼び名は使わないようにしています。「もっとすごい部屋をいくつも見てきましたよ。この程度は『ゴミ屋敷』の部類には入りません」と伝えて安心して頂くと共に、「よく、片付ける決心をしましたね」と称賛しています。そうすることで、お客様には安心して頂き、作業をしながらお客様から「どうして、こうなったのか」を聞かせてもらっています。併せて、弊社なりに色々とアドバイスをし、再発しないように促しています。

そんな弊社の経験から、色々と特徴的なことが分かってきました。

以下に紹介いたします。それは「部屋の状況」からと「生活環境や精神面」の2つの側面から見て取れます。そして、20~30代の若年層と60歳以上の高齢者で異なります。

①「部屋の状況」から30代~50代にみられる特徴
必ずある物としては、
・安いビニール傘が10本以上ある
・マニアックなコミックやフィギュア
そして、必ずと言って「ゴミ箱」が設置されていないことです。

②「部屋の状況」から高齢者にみられる特徴
女性の独居場合に必ずあるのが、
・大量のデパートなどの紙袋やコンビニなどのビニール袋
・乾物または、非常食や非常用の水
男性の独居の場合に若年層と同じく「ゴミ箱」がありません。特に台所に「ゴミ箱」がない用意されていない。
従って、生ごみと一緒にビール缶や酒ビンがコンビニ袋に入れられて大量におかれているケースが良く見られます。

③「生活環境や精神面」からの30代~50代にみられる特徴
ゴミ屋敷になった30代~50代の方は、興味のないことにはまったくの無頓着という傾向にあるようです。また、優先事項がはっきりしていて興味のあることにはとことん拘る性格の様です。
趣味のものをコレクションするという意味では、コミックやフィギュアのほかに、男性ですと「靴」「ジーンズ」、女性だと「化粧品」が山のようにあるケースが多々見られます。「仕事をしている」か「趣味に興じている」か以外に興味を持っていない、意識を向けることがないように思われます。
そのためか、大切なもののはずなのに、散らかっているコミックやフィギュアは処分・廃棄することを拒まれます。コミックやフィギュアに関しては、必ず「自分で整理・片付けを行うので取っておいてください」と言われてしまいます。
趣味であるゲームに興じたりコミックを読んだりしている時に、食べたコンビニ弁当や飲んだペットボトルなどはコンビニ袋に詰めるまではするけども、そこでゴミ箱が無い為に、あたりにほったらかしにする結果が積み重なり「ゴミ屋敷」になってしまうようです。

④「生活環境や精神面」からの高齢者にみられる特徴
昭和世代のためか、どうしても「もったいない」という意識が働くようです。「いつか使う」「ひょっとしたら役に立つかもしれない」と思い、溜め込んでしまうようです。
乾物や非常食などは、まさに「いつか必要」と思い買い込んでしまうようですが、消費期限を考慮せずに定期的に購入してしまい、結果的に溜まる一方となってしまうのです。
さらに、高齢者の場合には高齢ならではの事情があります。それは、
・体の自由が効かず、集積場にゴミを持っていけない
ゴミをゴミ袋に詰めるまではできるけれど、そこから集積場にゴミを出せずに家の中にゴミ袋が溜まっていくケースです。
・無気力、うつ(セルフネグレスト)による無関心
伴侶を亡くしたことにより、その後の生活に張り合いを無くし全く何もしなくなってしまう状態に陥ってしまうことがあります。

これらのケースの場合は、家族・近隣の住民や友人・ヘルパーさんができるだけ早く気づいて、救いの手を差し伸べる以外に解決する方法ないと思われます。実際に、ヘルパーさんやケアマネージャーさんが、ご自身が担当する高齢者(特に経済的余裕がなく施設に入居できない方)のお部屋の片付依頼が増えてきています。

⑶特殊なケース(収集癖のある人の場合)

よくテレビで話題になる『ゴミ屋敷』の事です。このテレビで紹介されるような敷地からゴミがあふれ出た現場の片付は、行政が中心になって対処・解決するため、実際に私たちは対応したことはありません。でも、こういう人がテレビで見るような『ゴミ屋敷』になってしまうのだろうなと思われるお客様に出会うことはあります。その方々に共通しているのは、バブル時代を経験し物欲社会で生きてきた人たちで、使うためでなく「持っていること」に満足感を抱いている方です。具体的には、50代以上の男性で、比較的高額なものを集めていて(純文学の書籍・絵画や昆虫の図鑑・ゴルフクラブ・骨董品など)、それらは今でも高額品であり今後価値が上がっていくと信じている方が多いです。(高価なコインや切手を収集されている方も多いでが、それらは比較的場所を取らず、かさ張らないので問題として表面化しづらい)

「この本はもう虫が食って穴が開いていますよ」、「このクラブはさびているので使えませんよ」とお客様を説得しても、絶対に捨てようとはしません。自身が過去にそれなりのお金を払って手に入れたという思いがあるために、「もったいない」「まだ、価値がある」と思い込んでいるようです。確かに美術品や手作りによる匠の技と言われるようなものは、それなりに価値があり年代とともにさらに価値が上がるのは事実です。が、そのためには、適正に保存されていなければなりません。また、当時は高価で便利なものであっても、技術の進歩とともにより安価でより便利なものが売られていることを説明してもなかなか理解して頂けません。

確かに、個々人の物に対する価値観は様々であり、一概に間違っているとは言えません。最後は、「つまずいて転んだりしないように整理しましょうね」「大切なものなら、きちんと整理して棚にしまっておきましょうね」と諭すところで終わりです。

こういう方々は、結局はその方の「気持ちや意志の問題」であり、どうすることもできないと痛感させられます


令和3年版の「高齢者白書」によると、2020年現在、日本の総人口は1億2,571万人のうち65歳以上の人口は3,619万人で、高齢化率は28.8%となっています。さらに一人暮らしの数は、2015年で男性約192万人、女性約400万人。(65歳以上人口に占める割合は男性13.3%、女性21.1%になっています) 従って、今後一人暮らしの高齢者の方の『ゴミ屋敷』問題は、増加していくでしょう。弊社のとってもいかに対応していくかは今後の課題です。

次の投稿で、『ゴミ屋敷』にならないためにどうすればいいかについて見ていきましょう。