片付けられないのには、訳がある②

それでも片付けられないのには、訳がある

アスペルガー症候群に続いて、今度はセルフ・ネグレクトについてお話しします。
こちらの症状は、もっと厄介です。なぜなら当人には、もはや「部屋を奇麗にしよう」「ゴミを捨てよう」という気すら持っていないからです。さらには、他人からの助言・支援すら拒否してしまうからです。
「セルフ・ネグレクト」は日本語に訳すと「自己放任」という意味で、つまりは、自分への関心がなくなり、身の回りのことを一切行わなくなってしまう状態なのです。
本来、成人は、食事や身なり、部屋の掃除といった基本的なことを自分自身で管理できるはずですが、セルフ・ネグレクトの状態になると、それらを一切しなくなり、しかも誰かに援助を求めることもなくなります。脱力・無気力状態となり、うつ病の症状に似た状態になったり、極度の自己嫌悪間にさいなまれる状態になります。
その結果、掃除をしない⇒ゴミを捨てない⇒汚部屋・ゴミ屋敷になるということも起こり得るのです。そうなる前に周囲の人が早く気付いて、手を差し伸べてあげることが必要です。

「セルフネグレクト」になってしまう原因
人それぞれですが、以下のようなものがあります。
・認知症・アルコール依存症
・恋人との別れや離婚
・家族がこの世を去ってしまった心の傷
・精神疾患(特にうつ病)
・生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病など)
・リストラ、強制解雇
・(いじめが原因での)引きこもり
・セクハラ
・インターネットの普及
・経済的困窮
・自尊心からの支援拒否

特に高齢者においては、自分の意思とは別に、うつ病や認知症により「セルフネグレクト」を誘発するケースが多いのも事実です。高齢者夫婦の二人暮らしが、その連れ合いを亡くしたことにより「セルフネグレクト」になってしまうケースが増えています。最悪は、そのまま「孤独死」を迎えるケースです。
また最近では、20代などの若者にも増えているようです。「リストラ」、「会社でのセクハラ・パワハラ」「経済的困窮」から生活に対する閉塞感・自己嫌悪に陥り、セルフ・ネグレクトになってしまうことがあるようです。昨年フジTVの情報番組『ノンストップ!』で、仕事のストレスからセルフ・ネグレクトになり「孤独死」した30代女性のケースが紹介されていました。

⑵セルフネグレクトの症状と診断方法
おもな症状を列挙しますが、当てはまる数が多いほど注意です。

1. 入浴、洗顔、歯磨きなどの本来当然やるべきことを億劫だと感じる(または行なっていない)
2. 部屋の片付け、掃除をするのを面倒に思ってしまう(または行なっていない)
3. 栄養バランスを考えた食事をするのを面倒に思ってしまう(または行なっていない)
4. 体調が悪くても病院に行かない(病院を拒否する)
5. 規則正しい生活を送れない
6. 極端に節約志向もしくは散財志向がある
7. 一人暮らしである(家族が家にいないことが多い)
8. 信頼できる友人、恋人、家族がいない(いても遠距離である)
=生活の知恵どっとこむ

休日や人目がない場合は、該当する方も予備軍と考えられます。

周囲の人々が早く気づいて、手を差し伸べてあげましょう

 

⑶セルフ・ネグレクトの対処、改善方法
セルフ・ネグレクトは、当人自信での改善・脱出はとても困難なことが多いです。先にも述べたセルフ・ネグレクトの症状として、その自覚がないこと、うつに似た症状や自己嫌悪感により自ら改善すべく行動することは期待できません。
まず大事なことは、ご家族・友人などの周囲が気づいてあげることです。そして、今自分がどういう状況なのかを自覚してもらえるように、根気強くコミュニケーションを図っていくしかありません。栄養不足や不衛生な環境に陥っていることなどを理解させてあげることです。その上で、専門機関や地域の民生委員へ相談するなどして、できるだけ早急に対処することをお勧めいたします。

⑷専門機関について
当人が高齢者の場合には、地域包括センターに相談してみてください。お近くの地域包括センターを探す際にはこちらをご利用されると便利です。
「介護助け合いホームページ あったかタウン」

また、地域の民生委員や児童委員に相談されるのも良いかと思います。地域の行政機関にお問い合わせください。
さらに、不眠・抑うつ症状・アルコール依存・認知症あるいは自殺衝動などがみられる場合は、専門の精神科医や心療内科を早期に受診して治療を受けることをお勧めします。
「汚部屋・ゴミ屋敷」の問題は、これらの相談・治療の後に解決しましょう。なぜなら、相談の結果、療養・介護施設への入居を進められることもあるからです。その上で、問題全体解決のための最善策を考えることをお勧めします。

 

「セルフ・ネグレクト」の最悪のケースは、「汚部屋・ゴミ屋敷」を通り越しての「孤独死・孤立死」です。家族・友人が早く気づき、早期の対応が何よりも大切です。