「遺族の故人に対する思い」・・・伝わってる!? 

私たちオービットが創業して2年半 が経とうとしています。おかげさまで多くの「遺品整理」のお仕事をさせて頂きました。

遺品整理において、できるだけ安く、効率よく作業をこなすことはもとより、「ご遺族の思いをくみ取り、できるだけそれに応える」ことを重視しています。なぜならば、それをしなければ「遺品整理」ではなく、単なる「不用品撤去作業」になってしまうからです。

過去にこんな事例がありました。

現場は公営住宅の3階(エレベーターなし)の3DK。まだ肌寒い日が続く3月の初旬ごろ、お見積りの約束でその現場に向かいました。

約束の時間より15分ほど早かったのですが、とりあえず階段で3階にある部屋の前まで来てみました。すると、部屋の中に既に人がいるような気配が・・・

そこで、呼び鈴を押してみました。「は~い」部屋の中からお年を召した感じの女性の声がしました。やっぱり既にご依頼者様は来てるんだと思い、ドアの前で待ってました。ところが・・・、いつまでたってもドアが開きません。再度呼び鈴を押すと、今度は中から声もしません。

事前に伺っていた携帯番号に電話をかけてみると、「もうすぐ、着きます。今建物の前まで来ています」と依頼者の返事とともに、電話の会話の奥から雨の音が聞こえてきました。ふと廊下から外を見てみると、いつの間にか外は大雨になっていました。階段の踊り場に出て下を覗いてみると、依頼者と思われる方が、建物の1階に駆け込んでくるところでした。この雨、まるで依頼者が来ることを拒んでいるようでした

玄関前で、改めてご依頼者とあいさつ、お部屋の中に入れて頂きました。

すると、入ってびっくり! ダイニングテーブルの上には湯飲みとお皿、部屋着も脱ぎ捨てたままの状態で生活感たっぷり状態でした。お母様が亡くなられて3か月経っているとのことですが、まったく整理された様子はありませんでした。ご依頼者様のご要望は、できるだけ安く、早く全部処分してほしいとのこと。すかさず「貴重品や大切なものや形見分けの分別は終わっているのですか?」と聞いてみました。「既に、一通り確認したので構いません」とのこと。「わかりました」と私は答えたものの、机やタンスの引き出しの中にはまだ物がびっしり入っているし、仏壇まであるのを確認して・・・悩みました。単にすべて捨てるのは簡単だけど、再度遺品類を確認した方がいいと思いました。その後部屋の中の処分する量と種類を確認して、「本日中にメールにて見積書をお送りいたします」と伝えて帰りました。

見積りでは、階段で運び出すことと、残された遺品の仕分け確認のためにスタッフを多めに手配する必要があるとの説明を添えて、割高になってしまった見積金額を提示しました。

結果は・・・、案の定「不成約」となりました。でも、内心ほっとしました。あの状態で、遺品の仕分けや確認をせずに、すべてを処分してしまうのは非常に忍びない気がしていました。絶対に重要な遺品や貴重品が存在すると思われるし、ましてや仏壇も軽々しく捨てるのはちょっと・・・。遺品整理のプロとして、今回の依頼は受けなくて良かったと思いました。

私が母を亡くしたときに、『もう少し何かしてあげられなかっただろうか』と悔いと罪悪感のようなものを感じたものです。今回のご依頼者からは、申し訳ないですが、故人に対する思いが感じ取れませんでした

確かに「遺品整理」は手間と時間がかかり大変ですが、遺族の方も多少なりとも故人の方の思いをくみ取るべく行動して頂きたいと常々思っています。そしてその思いや行いは、必ず故人に伝わっていると感じています


ご遺族の方と見積もり時や作業の方法についてお話をすると、一番に感じるのは、「ご遺族の故人に対する思い」です。真摯に「遺品整理」に向き合い、少しでも故人の思いをくみ取って、できるだけ故人の望むような形で遺品整理をしたいとお考えの遺族の場合、得てして「探し物」や「捨ててはいけないもの」そして「現金」などが比較的容易に見つかることが多々あります
我々も当然、遺族の方の思いをかなえてあげたいと思ってプランを提案し、作業に臨むわけですが、遺族の方と一緒に遺品の仕分け作業をしている時に、「探し物」についての所縁を訪ねたりすると、パッと目の前に現れたり、荷物の山からポロっとこぼれ落ちてきたりします。不思議なことに・・・。


私たちが気づいたことは、分かり易く言うと「遺族の方の故人に対する思い≧故人の遺族に対する思い」です。故人の遺族に対する思いと同等、あるいはそれ以上に遺族の方が故人の思いに報いたいという場合は、「探し物」が容易に見つかり、「貴重品」や「現金」などがよく出てきます。我々も遺族の方々のその気持ちを汲み取って、できるだけ「大切なもの」を見つけようと作業に臨みます

逆に「遺族の方の故人に対する思い<故人の遺族に対する思い」が感じられる場合です。この場合できるだけ早く・安く済ませたいという要望が多く、「位牌や仏壇もそのまま捨てて下さい」「いちいち確認しなくてもいいから捨てて下さい」といったことが多いです。作業中に見つけた貴重と思われるモノ(ご遺族の七五三や結婚式の写真・愛用の腕時計・故人の貴重なコレクション類など)をご遺族に提示しても、にべもなく「捨てて下さい」といわれるとガックリきます。そうなると、我々も単なるやっつけ仕事になってしまう傾向があります。


離れて暮らしていると、親が日ごろ何を考え、何を大切にしていたかなどはなかなかわからないものです。だからこそ、日ごろからコミュニケーションを取っておくことは大切です。きっと家族に引き継いでもらいたいこと、持っていてもらいたいものなどがあるはずです。愛用品などは、本来、棺の中に一緒に入れてあげるべきでしょう。遺品に目を通し、整理することで、生前の故人の状況や心情が見えています
遺品整理は、時間と労量が必要となる大変な作業です。しかし、『いずれは我が身の問題』である自分の死後問題として、遺品整理に真剣に向き合うと共に、自分の家族にもその重要性を伝えて頂きたい。弊社には、遺品を処分するか否かの前に、遺族の方と一緒に遺品を仕分けるサービスもございますので、是非検討してみてください。