賃貸物件からの退去時に、‟掃除”はどこまですべき?

引越で賃貸物件から退去する際に、掃除はどの程度まですればよいのでしょうか?

正直に言いますと、退去時の清掃は強制的なものではなく、‟使用人側のマナー”と言えるでしょう。ただし、奇麗にしてあれば退去時の不動産業者や大家さんに対する心証が良くなり、「敷金の返還額増加」に影響します。

但し、「敷金・礼金なしの物件」や契約書に「退去時の借主がクリーニング費用を負担する」などの文言がある場合は、どんなに退去時の物件がきれいでも一定額の「原状回復費用」の名目で料金を請求されることがあります。過度にキレイにする必要はありませんが、最低限の掃き掃除・掃除機掛けくらいはやっておくのが礼儀です。

社会人のマナーとして、そして敷金をより多く返金してもらいたいなら、やっぱりきちんと退去時の清掃は行うべきでしょう

この敷金返金額を増やすためには掃除だけでなく、ある程度修理や修繕をしたほうが良い場合があります。以下、簡単にお話ししますが、その前に「退去時の原状回復」について知っておく必要があります。

(1)原状回復とは

まず、『原状回復』とはどの程度を意味するのかについてです。国交省のガイドラインによりますと、
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について(国土交通省)

(2)経年劣化・通常損耗とは

続いて、ガイドラインに出てくる『経年劣化・通常損耗』についてです。
時間の経過によって自然に劣化したもの、通常範囲の使用で消耗した分などをいい、貸主側の負担となるものです(通常この消耗分は家賃に含まれています)
具体的には、
経年劣化 ・・・・・ フローリング、壁紙、畳などの日焼けなどによる変色
通常損耗 ・・・・・ 通常使用範囲内での汚れや擦れキズなど

(3)敷金返還増額の為に(場所別のお掃除・修理方法)

①台所
シンクやガスレンジ回りの汚れは、拭き掃除で奇麗なるなら通常原状回復による費用を請求されることはありません。但しカビや油汚れは借主側が費用を負担することになります。
スポンジに食器用洗剤をつけてこすればきれいになるはずです(酷くこびり付いた油にはクレンザーを付けたメラミンスポンジでこすれば落ちます)。労を惜しまず掃除したほうが敷金返還の為にはお得です。
換気扇の油汚れに関しては、5年・10年と1度も掃除をしてない場合は、かなり手ごわい汚れです。掃除をやるかやらないかはご自身の判断にお任せします。

②浴室
浴室の場合の汚れはカビがメインになるかと思います。カビにはアルカリ性の洗剤を使えば簡単に落とせます(市販のカビキラーで十分です)但し、目地など細かいところに入り込んだカビは、中々取れません。その場合は、該当箇所を水で湿らせしばらく洗剤に浸しておきます。2時間後くらいに使い古しの歯ブラシなどでこすってみてください。
白い斑点のような汚れは、石鹸カスや水垢です。こちらは酸性の洗剤で落とせます
ここで注意すべきは、絶対に酸性の洗剤とアルカリ性の洗剤を同時使用しないでください。有毒ガスが発生することがるので危険です。カビと石鹸カスをまとめてまとめてきれいにしたいところですが、しばらく時間を置くか、日を改めましょう。
できれば、排水口もキレイにしておくと良いでしょう。

③トイレ
便器の底に黒く沈着したカビと、ふちに黄色く付着した尿石の除去掃除です。
黒カビにはアルカリ性洗剤を、尿石には酸性の洗剤を使って落とします。長年放置した尿石はなかなか落ちません。弊社過去のブログ『頑固な「尿石」取りに挑戦!』を参照してください。

④クロスの汚れ
少々の手垢なら、そのままでも大丈夫かと思いますが、敷金返還の為にはクロスの汚れであるたばこのヤニや落書きを落とす必要があります。奇麗な雑巾での拭き作業になりますが、常に”奇麗”な雑巾で拭かなくてはなりません。でないと、汚れを広げてしまったり、雑巾に着いた汚れがまたクロスに付着しまいます。
そこでお勧めの方法は、汚れの上にキッチンペーパーをあて、その上から『重曹』あるいは『セスキ炭酸水』を噴霧して汚れが浮き上がるまでしばらく放置しておきます。その後、奇麗な雑巾で上からたたくように汚れを雑巾側に付着させます。
汚れの範囲が広い場合は、根気のいる作業になりますので、これもやるか否かはご自身の判断にお任せします。

⑤クロスや鴨井などの穴
直径3㎝以上の穴となるとちょっと、一般の方による修繕は難しいです。画鋲や釘などの穴ならホームセンターなどにお手頃な補修材が売っていますのでご利用ください。でも、少々の画鋲や釘の穴なら修繕の必要はありません。

⑥床のキズ
フローリングに家具を引きずったりしてできた傷は、リフォーム費用の対象となります。大きな傷だとやはり素人では奇麗に直すのは難しいです。細く浅いキズなら、これまたホームセンターなどで販売されています。
ハンダコテのお様なもので溶かして埋める補修材を使う方法と、粘土の様な補修材でへらで埋める方法の2種類あります。こちらについては、改めてブログで報告いたします。

(4)その他注意すべき事項

注意すべきこととして、元々の備え付けの備品などを処分してしまうと弁済する必要があります。
例えば
①キッチンの水道の蛇口
浄水器付きの蛇口に独自で取り換えたために、元の蛇口を処分してしまった場合
②風呂の蓋
カビが生えたり、割れたからといって、捨てないほうがいいです
③網戸のサッシ
網戸が破れたからといって、捨てないほうがいいです。モノによっては規格外のサッシがあり高額の物があります。
④備え付けの照明
玄関口やトイレの照明は、備え付けの場合が多いです。こちらも処分してしますと後々弁済請求されますので注意が必要です。


掃除や修繕には、それなりに時間と労力がかかります。最低限の掃き掃除・拭き掃除は行った上で、それ以上の清掃や修繕をどこまでやるかは、許される時間とコストを勘案して、ご自身で判断する必要があります。

 

キッチンやトイレなどの清掃は、日ごろからマメにやっていないといざという時に簡単にキレイにはなりません。年末・年始の大掃除の時などに、このブログを参考に”ちょっと一つ上のお掃除”をやってみてください